おいおい気づいてねーぞ

数年ほど前。
地下鉄の終電に乗り、酔ったまま駅を降りた後の話。
トイレでゆっくり用をすませてから通路にでると、周りに人影がないことに気づき、慌てて出口に向かいました。
恐らく最後の客だったのでしょう。

出口には、少し長めのエスカレーターがあります。
前方を見上げると、エスカレータの中段辺りで、サラリーマン風の男性がかがみ込んでいました。
彼も同じように酒に酔って、具合が悪くなったのかなと思っていましたが、どうも様子がおかしい。
右手を前方に差し出して微動だにしません。

男性のさらに前には、ミニスカートを履いた女性が立っていました。

なんとその男性は、スマホを使って、盗撮をしていたのです。

多分、彼は自分こそが最後の客だと思ったのでしょうね。
ぼくの存在には全く気づかず、女性の足元を覗き見していました。

後で分かったのですが、この時女性も少し酔っていたようで、耳にはイヤホンつけていたため、男性の存在に全く気づかなかったそうです。


盗撮されてましたよ。警察呼びますか?

咳払いの一つでもして、男性にぼくの存在を教えようかと思いましたが、少し離れていたこともあり、ほどなくして 二人は出口に着き、左右に分かれました。

一気に酔いが醒めたぼくは、エスカレータを駆け上り、男性を姿を確認。
彼は、酔っていたのか、今盗撮した画像をみているのか、スマホの画面を見ながら、ゆっくりと歩いています。

反対側に向かって歩く女性に声をかけるか一瞬躊躇したものの、すぐに行動にでました。

「すいません」

女性はまず僕の声に驚いてイヤホンを外しました。
いや、まぁ、驚くの当たり前だよね。

しかし、ここは、ぼくの超(スーパー)コミュ力を発動させます!!

「突然ごめんね。」
「今エスカレータであの男の人に盗撮されてましたよ。気づいてました?」

できるだけ怪しまれないように、ゆっくりと丁寧に話しかけます。
そして、ぼくは少し離れたところにいる男性に気づかれないように、彼を指差しました。
女性はさらに驚いた顔をしながら、首を横にブンブン。

「今から、警察呼びますか?呼ぶなら、自分が電話かけますよ」

とっさの申し出にも関わらず、彼女はすぐに

「お願いします」

と強く言い切りました。

これまた、後から聞いた話ですが、彼女は以前電車内で痴漢にあったことがあって、その時に何も声をだせなかった自分に悔しい思いを抱いていたそうです。

「わかりました。じゃあ、自分が今からあの人に声かけてくるから。そこに隠れてて」

彼女がうなずくと、ぼくは男性に向かって足を進めたのです。

つづく

ダメ盗撮